オーケストラ・アンサンブル金沢

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2024.09.25 お知らせ【Concert Report #2】第484回定期公演フィルハーモニーシリーズ

オーケストラ・アンサンブル金沢の定期公演をお聞きくださった音楽評論家、ジャーナリストの方々に当日の演奏について寄稿していただく「Concert Report」。17日の公演評をもう一つお届けします。

 シーズン開幕を寿ぐベートーヴェン・プログラム。鮮烈この上ない「プロメテウスの創造物」序曲から、広上淳一とオーケストラ・アンサンブル金沢は、高度にプロフェッショナルな蜜月を披露したのではないか。
 素晴らしい。広上がOEKのアーティスティック・リーダーに就任して3年。この愛すべき指揮者は、多士済々なメンバーの技、覇気を促す。踊っているように見えて、実は経過句的なパッセージやハーモニーの移ろいに意を払い、フレーズの頂点や「句読点」をくっきりと視覚化する。そんな変幻自在なタクトと呼応するOEKの妙技を満喫した。響きが以前にもまして明晰になった。奥行き、広がりを感じさせるようになった。このコンビ、まさに相思相愛だが、慣れあっている風情はなく、好ましい距離感、緊張感を保った上で音楽の「旅」を続けているようである。
 演奏と創作の両輪で魔境を奏でる鬼才ファジル・サイに、掛け値なしの大喝采が送られた。ベートーヴェンの新機軸も聴きどころとなるピアノ協奏曲第3番ハ短調。サイが紡ぐ、ホール空間をさ迷うかのような妖しい音色(ねいろ)を察知した広上とOEKにも拍手を。響きの行方を確かめるべく、サイと広上が同じ方向を見つめ、微笑みあう場面が何度もあった。サイは、ファンの願いをかなえるかのように自作「ブラック・アース」を弾く。特殊奏法が特殊にならない深遠な音楽。
 広上とOEKは、管弦、ティンパニもときに主役を演じる交響曲第4番変ロ長調が、コンサートのメインディッシュになることを証明した。緩急楽想の絶妙な転換、木管楽器、ティンパニの各「ソロ」に酔った。(文=奥田佳道)

2024.09.20 お知らせ【Concert Report #1】第484回定期公演フィルハーモニーシリーズ

オーケストラ・アンサンブル金沢(以下、OEK)の新シーズンが開幕。
その記念すべき1公演目は鬼才ファジル・サイを迎えて、我らが広上淳一(OEKアーティスティック・リーダー)とのオール・ベートヴェンプログラムをお楽しみいただきました。
ご来場いただいた皆様、ありがとうございました。

今回よりOEKの定期公演をお聞きくださった音楽評論家、ジャーナリストの方々に当日の演奏について寄稿していただく「Concert Report」を開始いたします。

 バッハから自作まで、幅広いレパートリーを誇るピアニストのファジル・サイ。私は東京でもほぼ毎回、彼の演奏に触れ来たが、今年はこのOEK定期への出演のみ。それならば金沢に行かなくてはと新幹線に乗った。オール・ベートーヴェン・プロの第484回定期は「プロメテウスの創造物」序曲から始まった。オーケストラの引き締まった響き、自在な広上の指揮によって躍動感が生まれる。そして舞台転換して「ピアノ協奏曲第3番」へ。いつものような、少し跳ねる歩き方で舞台袖から現れたサイは、オケの提示部が始まると、オケの方を向いて、その響きに耳を傾ける。そしてピアノのソロが登場。ダイナミックな音量、特に左手の厚い音の上に、きらめくような右手のパッセージが加わる。ベートーヴェンの音楽作りに必要な構築感を示しながらも、細かい動きやニュアンスをフレーズの至る所に感じさせつつ、オーケストラの動きに合わせた部分でもはっきりと自己主張するサイらしい演奏が展開された。第1楽章のカデンツァは、作曲家としてのサイの魅力も垣間見える独特のもので、心の中で快哉を叫ぶ。以後の楽章も機敏なやり取りが楽しかった。アンコールには自作「ブラック・アース」。サイのファンであればすぐに分かる代表曲。聴くたびに、長くなっているような気がするのだが、それは仲秋の月の為せる技だったのかもしれない。(文=片桐卓也)